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2001年6月27日
vol.06「自己確立は他者確立の裏打ち」

「自己確立」という言葉があります。

読んで字の如しです。
私たちは、幼い時から、自主性を持て、主体性を持て、自己を確立せよ、と教育されてきました。
教育の成果があって、多くの人は「自己確立」に到達したはずです。

しかし、よく考えてみると、
果たして「自己確立」とはそもそも何なのかという疑問が生じます。

一般的には、そうした疑問は生じないのかもしれませんが、
私は、日頃「悩んでいる人」とばかり応対しているので、
普通の人がそのまま鵜呑みにして信じてしまうような通念にも疑問を持ってしまうのです。
例えば「果たして自己確立するとどんな良いことがあるのだろうか?」も、
そのひとつと言えるでしょう。

今これを読んでくださっている方の中に
「自己」と「自我」の違いを明確に説明できる方がどれほどいらっしゃるでしょうか。

気になってしまったあなたは「哲学事典」をひもといてください。
簡単に「自己確立」と言っていますが、考え出すとなかなか面倒なものです。

私は、自己確立がうまくいかなくて、他者比較の末に劣等感に陥ってしまっている人が多いことを
カウンセリングの現場でよく知っているので、
この際、無駄な自己確立の幻想に囚われて悩むのはやめた方が良いことを提案しておきます。

結論から先に言ってしまうと、
「自己確立」ということはとりもなおさず「他者確立の裏打ち行為」にほかならないと言うことです。

すなわち、人間が社会人としての自己を確立するためには、何かその「規範」となるものを求めます。
ところが、この規範となるもののアルケー(ここでは物事の根源という意味で使っています)が、
曖昧模糊として、何一つとして確立していないのです。

ソシュールという人が開祖になっている
「構造主義」という哲学を少し学んでいただくと誰にでも理解できるのですが、
「自己確立の規範」などと言うものは
「それが共通の言語として認知できる世界」でしか通用しないことがわかります。
また、自己確立の規範となるのは、規範となるべきどこかの誰かが過去に存在していて、
その人が「私はこう確立した」と陳述したことをなぞっているに過ぎません。

古代はどうか知りませんが、
今日の人間で、まったくオリジナリティーの自己確立などできる人は皆無に近いでしょう。
言い換えれば、自己確立は規範になると定めた先人の模倣。
「子引き、孫引き」の自己確立なのです。
規範となるべき人物も時代、社会、思想、宗教などによってさまざまに異なることは自明の理です。

人間は後天的に得た先人の知識をあたかも自分が発明したかのように思い込むものですが、
私たちが感じたり、考えたりしたことは、ほとんど場合、
既に過去の誰かが、考え、書き記しておいたことです。
ですから、問題は、楽な気持ちで自分の生き方を決めればよいのです。
お仕着せの自己確立で苦労する必要などさらさらありません。

さしずめ、私は、「落語のご隠居」を規範として自己確立しております。