- 2005年6月15日
- vol.26「占い依存症についての考察」
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最近、ある新聞社から「占い依存症」についての取材依頼があった。
そもそも論だが、「依存症」という一種の病気は、別に「占い」に限ったことではない。
依存症にかかりやすい性格や体質の人は、それこそ何にでも依存するのである。
「アルコール依存症」「薬物依存症」などの例をみるまでもなく、
ちょっとしたきっかけがあり、依存できる対象があれば、間違いなく依存する。古来、人間がわが身をなげうって依存してしまう最も根源に鎮座ましましているのは
「占い」ではなく「宗教」なのではないだろうか。占いも宗教も源は同根だが、宗教で言うところの「帰依」は、
乱暴な言い方をしてしまえば「自己投身的全面依存」に他ならない。
宗教はそれぞれの「信仰」に根拠を持つ 崇敬対象に依存することで成立しているのである。
その根深さは一過性の占いの比ではなかろう。しかし、記者氏が眉をひそめるように、占い師の中には顧客のリピート回数を増やすために、
意図的に依存症に至るような誘導をする者がいることも否定はできない。
まあ、宗教家は説得力のある説法をして信者を依存させ、増員しなければ
宗教経営は成り立たないわけだから、それを考えれば
同じ手法で占い師が、依存を誘導しても一概に目くじらを立てるわけにもいくまい。占い師だけではない心理カウンセラーと称する職業の人々にも、
実際には占い師以上に依存誘導をかける者がいることを、
私は来談の現場を通じてよく知っている。
営利営業という俎上では、はっきり言って宗教家もカウンセラーも占い師も
鱗の色が違うだけの同種の魚なのかもしれない。
もっと広く言えば、あらゆるサービス業というものは、
その「依存誘導方式」で成立しているのである。しかし、私はかねて依存体質というものが個人の自立を損ねる大きな原因になりうると思っているので、
相談者からできうる限りその悪しき体質を改善するように努めてきたつもりである。心理カウンセリングの中に過去・現在・未来の時間空間を縦横に取り入れる「時空心理学」、
いわば「時空人間学」を長年にわたって拓いてきたのはそのためである。
この研究が、今日まだ旧弊なセクト主義、
あるいは、教条主義的な心理学者の中では受け入れられない部分はあるにしろ、
トランスパーソナル的な柔軟な思考を持つ新鋭の人間学研究者や現場のカウンセラーの間では
次第に理解を得つつあるのはやはり嬉しい。現代はすでに狭量な心理学から広範な人間学へ移行していく過渡期である。
私は、人間が状況の中で運命(時空)に翻弄され依存症に陥るプロセスを
施術の過程でよく知っている。
知っているがゆえにそれを食い止める手段もまた模索していくことができるのである。私のように状況に応じて心理カウンセリングも占星学も用いる
時空心理学的な来談療法のアプローチをする者にとっては、
常に「いかに相談者の依存性を断ち切り、個人の自立を側面からサポートできるか」
が大きな目標となっている。私に言わしめれば、「占い」が人間を依存症に陥れるのではなく、
相談者がどんな「占い師」に関わるかがそもそもの問題なのである。
「人を見て道を問え」とは正にこの事。占い依存症をとりざたし、云々する前に、
社会が解決しなければならない「自立への道」の支援不備に対する責任は重い。
増え続ける「ニート」にも的確な改善の指針も示せぬこの国の指導者と未来を遠望する時、
占いなどの関わらざるところで膨大な数の「依存症」が蔓延していくことを危惧するのは
私だけだろうか。
梅雨空を見上げてほんの少し憂鬱な気分になってみたりする。