- 2017年8月24日
- vol.36「植物とのコミュニケーション」アイラ・アリス
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数年前、我が家の庭に
凌霄花(ノウゼンカズラ)がやってきました。名前だけでは花の姿が思い浮かばない方もいるかもしれませんが、
夏には人家の庭先でよく見かける、
オレンジ色のラッパ型の花を房状にたくさんつける植物です。
凌霄花の“霄”は“空”を意味し、
それを凌ぐほどぐんぐん伸びていくところからついた名前だそうです。
実際、茎から気根と言われるヒゲのようなものを出して
他の植物や壁などにくっつき、上へ上へと伸びていきます。先ほど“やってきた”と言いましたが、
実はこの子、私が自分で植えたわけではなく、
まさに“やってきた”のです。そのさらに数年前から、私は他の場所で凌霄花を見かけるたびに、
なぜかノスタルジックな気持ちになっていました。
確かに郊外や農家のお家などでよく見る郷愁を誘う花ではあるのですが、
自分が子供のころに見た記憶はないですし、特に思い入れがあるわけでもなく、
この花の存在、名前を知ったのも大人になってからでした。
それなのにどうしてこんなに懐かしい気持ちになるのか不思議でしたが、
とにかく私は凌霄花がほしくなり、
「植えるならここね」と場所まで決めていたのです。そんなあるとき、植えようと思っていたまさにその場所から、
見知らぬ蔓がぐんぐん伸びてきました。
はじめ何の植物なのかわからなかったのですが、
そのうちに蕾がつき、花が咲いて、
正体が分かったというわけ。
風や鳥が種を運んだのでしょうが、
それにしても不思議なシンクロニシティです。その年は花はほんのひと房しか咲きませんでしたが、
それがなければよくわからないまま抜いてしまっていたかもしれないので、
花としてみれば、それを避けるための自己紹介だったのかもしれませんね。
刈り取られないことがわかって安心したのか、
その後数年は花が咲きませんでした。寂しく思い、今年は春先に蔦や葉が伸び始めてからずっと、
「花を見せてね」と話しかけていたのです。
それで今年は、ひと夏の間次から次へと咲いてくれています。植物にも感情があり、話しかければ気持ちが通じる、とよく言われますが、
私にとってはこの凌霄花が、それを強く実感させてくれた植物なのです。植物が会話をする、と言ったら
“スピリチュアルなお話かな”と思う方もいるかもしれませんが、
最近では生物学の世界でも、植物と生物、
また植物間でのコミュニケーションが研究され、
少しずつ明らかになってきています。
アロマテラピーを勉強している方は
きっと聞いたことがあると思いますが、
植物は自ら香りを放出することによって、
自分にとって害になる虫を避けたり、
その虫の天敵となる虫を呼んだり、
さらには付近にいる仲間の植物に危険を知らせ、
備えるように伝えたりするのだそうです。また、人が毎日話しかけることで植物が元気になる、とは
よく言われることですね。昔絵本で見た森のように、
近い将来私たちが植物の言葉を理解して、
もっと自由に会話できる日が来るのかもしれませんね。