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2024年9月1日
vol.114「デ・キリコ展」ジョアンナ・リリス

6月中旬キリコ展を観に行きました。
学生時代から「通りの神秘と憂愁」という絵が大好きだったので、
今回の開催をとても楽しみにしていました。

その絵は光と闇を象徴するような建物の間を、
輪を押しながら走る少女が印象的で、
また建物の影からそっと忍び寄る何者かわからない影が、
なんとも言えない不気味さを漂わせています。

キリコがこの作品を制作していたのは第一次世界大戦が始まった直後で、
キリコの戦争に対する不安や恐怖がこの絵に投影されていたのでしょう。

実際彼は「世界はこれからこの絵のようになっていくのだ」と
コメントを残しています。

キリコの絵は時間と空間のずれの効果を狙ったり、
遠近法の視点を2つ以上にしたり、
実際に見ることが出来ないものを普段見えているものと取り替えて
絵画にしているのが特徴です。
この技法を形而上絵画と言い、
そのあとの流れを組むシュールリアリズムのピカソやダリ、マグリットらに、
大きな影響を与えていったとされています。

この作風は画面上に不穏な緊張感を形成し、
神秘的な独特な魅力を表していましたから、
専門家からも高い評価を受けています。

さて、楽しみにしていた「通りの神秘と憂愁」ですが、
実は今回展示されていませんでした。
もしかしたらあるかもと最後まで期待していたので、ちょっと残念でした。

それでも今まで見たこともないような、
キリコがルノワールやルーベンスに影響され描いていた、
印象派を思わせるような作品も鑑賞できましたし、
とても見ごたえのある展覧会だったと思います。

占いとアートは一見違う分野の様に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
美しいタロットのイラストや、1枚1枚に秘められた神秘的なメッセージは
とても芸術的な気がします。

さらに、ホロスコープという生まれた時に空に輝く星の配置が、
個人個人の運命を左右するという現象そのものが、
私にはとてもアーティスティックなものに感じられます。

毎日猛暑が続いていますが、
みなさんも休日に好きなアートを鑑賞しに出かけて静かなひと時を過ごすと、
夏の疲れが癒せるかもしれませんよ。